先日板垣鷹穂の『藝術界の基調と時潮』を買いました。彼の本は他に『観想の玩具』、『現代日本の藝術』、そして先年再刊された『建築』、戦後に出た『寺田寅彦』を持っています。本の価格も大体この順番でしょうか。この著者の本は100円コーナーとガラスケースの両方にあります。ありふれた本と、めったに見ることができない本の、両方を残しました。しかしそろそろ全集か著作集の計画が出てもいいのではないでしょうか。
『絵画の展覧会』という文章の冒頭に、彼は絵画展の原始的形態について驚くべきことを書いています。広場に向かった建物の外壁に絵画を展示したことがいわゆる展覧会の始まりであると。
彼はうろおぼえのためかその典拠を明示していませんが、気になります。彼の文章の面白さはこのような唐突な発見と目の前の現実が同居していることです。日本の当時の院展とか二科展の雰囲気を伝える微細な情報もまた今となっては貴重なものです。
春山行夫の本もちょっとずつ増えて来ましたが、ほんとうに高価なのはやはり手が出ません。この著者も安い本と高い本の両方を残しました。『花とパイプ』の中に、花言葉なんかくだらない、という意味の発言があって、後に花言葉の本を出した著者の言葉として、ちょっと笑えます。
彼の文章は、そのリズムの快調さと、適切な情報量が一致した時のものが最もよくて、そのバランスはあまり長続きしません。