先日鎌倉で買った2冊の本を今並行して読んでいる。1冊は宇井丑之助『ジョン・ラスキンの人と思想』、もう1冊はアジア・エートス研究会の『アジア近代化の研究』。
私の部屋には40年以上前に購入した『近世画家論』全4冊をはじめ、ラスキンの本は何冊もあるが、多分もっとも読みやすい『胡麻と百合』以外はそのさわりを知るだけで、どうも読み続けられなかった。その道案内を期待して今回の本を取りあげたが、校正不足なのか時々日本語にあやふやなところがあって、たまに文脈を見失うことがある。しかし全体的には分かりやすく、まだ半分しか読んでいないが、今のところラスキンが美術理論家から社会思想家へと移行して行くそれぞれの段階が要領よく整理されている。
ラスキンによる近代批判を参照しながら『アジア近代化の研究』を読むことが私の欲張った目標だが、まだそこまで整理がついていない。ラスキン自身の著作に入ってから多少は意味を持つようになるとは思う。
これまで、うかつなことにアジア・エートス研究会のことはまったく知らなかった。今大急ぎで他の本を探し、集めている。『アジアの近代化』で提出されている課題は、「アートとコミュニティ」の問題として、私が最近東南アジアを巡り歩きながら考えていたことをもう一度見直してみる手がかりとして、時代を超えて私のなかで話がつながってしまった。それは研究の対象の作用によって、適用しようとしていた方法自身が見直される過程が始まるということである。まだ入口の感想なので今後修正が入るかもしれないが、とりあえずの報告としてここに書いておく。