読みました。持ち歩いて読みました。ストーリーはほとんど覚えていませんでした。
夏のペテルブルグの出来事です。ある日主人公はどこか見覚えのある男が自分の身辺に出没していることに気がつきます。やがて男は深夜に主人公の家の扉をこじ開けようとします。男は昔主人公が不倫の関係にあった女性の夫でした。
で、このふたりの奇妙な関係を中心に話は展開していきます。まったくの悪人でもなければ善人でもなく、卑しくもあれば、善良でもあり、未来への神秘的な希望のうちに人間が持つ最善の資質をかいま見せながら、でも再びいつもの卑俗な快楽へと戻っていく。このぎりぎりのところを作者はよく知っています。
そう、これがドストエフスキーでした。
ストーリーは忘れても、私の中に何か残っているようです。どちらへ行ってもおかしくない何かとして。
次は『未成年』を読んでみます。大冊ですが、40年前まったく意味が分からなかったのでこれにしました。