『詩人羅月』は耕治人の作品で、タイトルの最初に小説と付いていますが、ほぼ評伝です。淡々とした書きぶりで、無理をしなくていいんだと自分を落ち着かせてくれるそんな文体です。かすかな記憶ですが、昔この人の小説が美術手帖に掲載されたことがあったような。美術手帖に小説が載ることもあったのか、しかし記憶違いかもしれません。いつか読もうと思いながらこれまでなぜか手を出さずにいた久生十蘭ですが、彼の『美国横断鉄路』を買いました。まだ最初の部分を少し読んだだけですが、かなり変わった雰囲気です。
これは最近というほどではありませんが、A・ジッドの『コンゴ紀行』正、続、岩波文庫を少しずつ読んでいます。今回はかなり分析的にていねいに読んでみようということで、たとえば生物学的な記述や風景についての描写が読書の感想と連続していたり、集落を訪ね歩くうちに植民地における圧政の問題が顕在化していく過程とか、いくつかのレベルの記述が並行していることに気を留めながら読み進めています。