講談社学術文庫の3冊本です。この本は最初新刊で出た当時に読みました。奥付を見ると1976年だそうだから、もう30年以上前のことです。いつのまにかこの本は手元からなくなり、その後1、2年前に古本屋で見つけて1巻目を持ち歩いて読んでいたのですが、ある時人に貸して、結局そのままになっています。そういえば別の人に貸した講談社文庫の『レム短編集』も10年ばかり還って来ないなあ。で、ベルの本ですが、数日前水道橋の古本屋さんで見つけて、これが3度目の購入ということになりました。彼は保守的な思想家とされていますが、その理由の一つはマルクス主義の、すべての国が遅かれ早かれ同じ運命をたどるという『画一的な近代化』論と、経済決定論の両方を否定して、政治と経済ー技術および文化なるものは必ずしも共通の原理、原則にしたがうわけではなく、それぞれは自立した原則のもとに異なる発展をしている、ゆえに社会とは決して統一的な存在ではない、というような(すみません、要約がまずくて)理論のゆえでした。私は若い時にこの説を大変面白いと思い、自分でも気づかぬうちに影響を受けていたようです。彼の論旨は時々低調になって、どうかな、と思うところもあるのですが、この基本的な考え方は意外なほど私のなかに残っていました。彼は統一的ではないことをむしろ近代の病のようなものとして見ているようですが、私は彼の意図にはまったく無関係に、自分の中で違う論理を展開していました。そのような意味で、強く影響を受けた本です。