2003年、会を閉じるにあたって発行されたもので、活動の歩みやデータとともに関係者の思い出を集めている。実質的には1963年頃に活動が始まったということだから、大変先駆的だったことが分かる。当初は日本の近代化の問題を取りあげる中で、それと比較する形でアジアにおける近代化の過程とその受容の個別性、特に東南アジアにおいて当時同時代的に進行していた状況に注目し、おそらく理論先行であった時代に、いち早く現地調査と報告を行なって、その結果、むしろ新しい理論的な枠組みの必要性を唱えたことが注目される。実際にこの研究会に関わっていた人たちの間には分野の違いだけではなく、イデオロギー上の違いもあって、決して意見が一致したから集まったということではないようだが、それもまたこの会の重要な存在理由だったのだろう。
思い出を語るほとんどの人たちが当然大学人だが、その後の大学の変質がこのような研究会の存続を許さなかったという時代的な変化についても言及されている。
たまたま『アジア近代化の研究』という同会編集の本を見つけたことに始まって、またたく間に関係者の本も含めて6冊ほどが集まった。どれも簡単には読めそうにない本ばかりだが、遅まきながら、この感謝すべき先駆者のみなさんの業績を追跡してみたい。