お金がかからないというのは、私のように本を買うだけでほったらかしにしていた人間にとっては今お金を使うわけではないので安上がりだ、ということです。
最近はエアコンをつけて籐椅子か畳の上で少し横になるようなかっこうで本を読み始めると、必ず途中で眠くなり、いつのまにか短い時間眠り込んでいます。そしてまたふと目が醒めては続きを読み始めるという始末です。乗り物でもたまに坐れた時など、本を開いたままいきなり寝てしまっていることがあります。若い頃に較べると集中力が落ちています。
それでも、たまたまこちらの気持が本の内容に引きよせられて、つぎつぎに考えが広がって行くような時があるから、読書は楽しい。ある本の内容がそれまでまったく関係ないと思われていた別の本につながったり、なぜか現実の出来事に介入しようとしていると見えてくることもあります。ブレンターノの『ゴッケル物語』という童話がありました。その結末に驚いて、その時の驚きを壊したくなくて再読していませんが、メルヘンと現実との間にはたがいにふと一線を越えるかもしれない危うさがあると教えてくれました。